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人に優しい物語。


 「深夜食堂」「フルーツ宅配便」・・・ビックコミックオリジナルで連載されていて、チェックしている漫画です。

「深夜食堂」は日本でドラマ化され、アジア各国(台湾、韓国、中国)でも人気で、リメイクもされました。

新宿にある深夜〜翌朝にオープンしている「めしや」が舞台。ちょっと訳ありそうな、顔に刀傷?がある男性店主が一人で切り盛りしているお店です。そこに来店する客のエピソードが毎回紹介されます。お店で出されるお酒のつまみや料理と一緒に。

常連には、ヤクザの兄さんとチンピラ、ストリッパーも、新宿二丁目のバーのママも、結婚願望全開の独身女子3人組や、ダイエットにことごとく失敗する大食漢の女の子もいる。

ドラマでは、店主を小林薫さんが演じられいて、「いい男すぎる!」と当初は思ったのでしたが、原作を大切にした素晴らしい出来でした。美術も、キャスティングも納得。

「フルーツ宅配便」は、東京に割合近い地方都市のデリヘルが舞台。

連載スタートから、さほど立っていないので、コミックは2〜3巻ですが、オススメです!

フルーツの名前を源氏名にする女性たちが、お客様に宅配?されて・・・というお話。

ちょっと強面のオーナーに、力持ちで大食いのドライバー役の男の子や、店長をやっているごく平凡な男の子が、女の子たちをお届けしています。

舞台がデリヘルなのですが、艶っぽい描写は皆無。

 どちらも、華やかな舞台には決して立つことのない、市井の人たちが主人公です。

平凡・・・というよりも、ずっと厳しい人生を送っている人たちのお話です。

お金もなかなか稼げないし、仕事もきついし、借金を背負っていたり、恋愛がうまく行っていなかったり・・・。そんな状況からなんとか脱出したいと、毎日必死に生きている。

いかにもこの世の中にありがちな、シケた話なのかもしれない。

職業に貴賎はないと言いながら、実際にはそんなことはないと思い知らされる物語。

不器用さや、判断の甘さが災いしたり、たまたまの巡り合せやきっかけで、人に馬鹿にされたり、見下されやすい職業を選ぶことしかできなかった。

ひょっとしたら、運が悪かったら・・・自分がその境遇になっていたかもしれない。

過酷な状況にいる人たちのお話が多いのですが、救いがある。

作品って、人柄が出るんだなあと思います。

作者の人を見る目が優しい。

エンターティメント性が高いとは言えませんし、絵柄は単純化されていて、地味な部類に入ると思うのですが、とても魅力的なのです。

クスッと笑えたり、え〜っ!!って思ったり。

大変な人生にも、そんな瞬間があるよね、とホッとさせてくれたり。

暮れは、懐と気持ちに余裕がなくなって、「切羽詰まった」感のある事件が多い時期です。

そんな事件をニュースで見る度に、もっと、小さくても幸せを感じられる「気持ちに余裕がある社会」だったらいいのになあ・・・と、これらの「人に優しい物語」を読みながら思います。

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